当院に来られる腰痛の方で、整形外科でレントゲンを撮って、ヘルニアと言われたと言う方が多くいらっしゃいます。
中には80代の方もいらっしゃいますが、ある程度の年齢になると新たにヘルニアを起こすことは考えにくく、レントゲンではヘルニアは確認できないということをご存知でしょうか?
まずヘルニアと言うのははみ出すという意味で、椎間板の中の髄核がはみ出して神経を圧迫する事により痛みが出るとされています。
複数の腰痛治療で有名な整形外科の先生の講習で聞いた話しですが。
この髄核と言うのは若いころはゼリーのような状態なのですが20代以降どんどんなくなって行くので、50代以降ではほとんどはみ出すものがないため、新たにヘルニアは起こらないと言うことでした。
また、レントゲンは「骨」を写すものですが、ヘルニアは「骨」ではない椎間板が膨れたり、中の髄核というゼリー状のものがはみ出しているものを言いますので、レントゲンでは確認出来ないわけです。
もちろん高齢者の腰を調べるとヘルニアを起こした跡が多くみられるというのは確かだそうですが、以前のヘルニアがそのまま残っていても症状が出ないことも多くあり、MRIでヘルニアが写っていても、そのせいで症状が出ているかどうかは別の話なようです。
では、なぜ椎間板ヘルニアだと診断したのかというと、診断名を付ける必要があるので「背骨と背骨の間が狭い(椎間板が薄くなっているから)」「痺れがあるから」などの理由でヘルニアではないか。
という説明をするということのようです。
確かに今まで整形外科でレントゲンを撮っただけでヘルニアと言われた患者さんの中にも「痺れがある」と訴え「背骨と背骨の間が狭い」と言われている方が多いようです。
MRIやCTで画像診断し、症状と一致した場合確定となるようですが、MRIはどこにでもあるものではありませんので、レントゲンで推測し、腰か、腰より下部に症状を訴えているためそう診断するのだと思います。
時々80代以降の女性で特にヘルニアのような症状が出ていない方も、レントゲンを撮ってヘルニアと言われてくることがあります。
腰部の骨や靭帯の損傷を疑って、整形外科で診察を受けてもらうように紹介状を出しても、レントゲンに問題ないからヘルニアだと言われ牽引されたと言う方もいますから、そういう方には「とにかく病名をつけなければならないということだと思います。」と説明しています。
国家資格を取る際に習う、教科書的な回答では、ヘルニアは20代の活動性の高い男性に多くみられるものです。
腰痛治療で有名な先生の講習では実際は10代~20代に多いと言うことでした。
統計上は60代まで割と多くあるようですがこれは上記のような診断によりヘルニアと診断された方も含まれてのことなのでしょうか。
そして、「椎間板ヘルニア」と診断されたら、たいてい牽引されます。
これは何のためにするのか、と言えば、以前は「骨と骨の間を広げ、患部の物理的ストレスを低減させる」ということになっていたようですが、かなり前からこれによりヘルニアが改善されると言うことはないと言われているので、もしも効果があるとすれば、その腰痛はヘルニアによるものではなく「筋肉などのストレッチ」で症状が改善したと言うことになるのだと思います。
例え椎間板ヘルニアと診断されても、一日のうちに痛みの変化があったり、お風呂などで温まった時に痛みが軽減した、なんて経験ありませんか?ヘルニアが時間や体温によって、出たり引っ込んだりするとわけでもありませんから、時間帯や温めることにより痛みが変化する時は、ヘルニア以外に痛みの原因があると考えた方が妥当です。
筋肉などの軟部組織のストレッチをすることにより、患部の血行改善や筋緊張、疼痛の緩和を期待できるのですが、患部の血行改善などは機械の牽引よりも手技のほうが優れているのではないかと私は思います。