以前は腹筋と背筋を鍛えると腹腔内圧を高めることができ、それにより体幹が安定し腰の負担が軽減され、腰痛予防・改善になるといわれていました。
そういった話を聞いたことがあるかたも多いのではないでしょうか?
そのように言われていた理由として
- 腹腔を風船にたとえて、腹直筋、腹斜筋、腹横筋が同時に収縮すると風船を周りから押さえるような状態になり体幹が安定する。
- 腹筋をつけて腹腔内圧力が加わるようになると、腹腔内圧で体幹が安定してコルセットをしたような状態になり腰への負荷が軽減される。
- 腹筋と背筋が強くなれば、支える「壁」ができるので、腰の負担が軽減される。
というようなものが多かったのですが、どれも、なんとなくそうなんだろうなと感じてしまうような説明ですよね。
ところが、10年ほど前からこれは違うという話を腰痛に詳しい先生の講習などでは度々聞くようになりました。
とはいっても同業者の間でも未だに知らない人も多いようなので、ここでお伝えしたいと思います。
何が違うかといえば、腹筋を鍛えても腹圧が上がるわけではなく、腹圧で体幹を安定させるのも無理があるという事です。
腹筋を鍛えても呼吸している限り腹圧を上げることはできない
まず、腹筋運動などで腹筋の緊張をさせていても呼吸をしている限り腹腔内圧は上昇しないということです。
腹圧を上げるときに使われる腹横筋という筋肉がありますが、体幹のトレーニングで基本として使われる、腹横筋のトレーニングになるドローイン(お腹をへこませる)をしていても呼吸をしている場合は腹腔内圧の上昇は起きません。
腹腔内圧は、横隔膜を緊張させて息を止めていきむ時に高まりますが、腹筋運動やドローインをすれば高まるわけではないという事です。
筋肉に興味がない方ですと、横隔膜というとただの膜だと思っている方が多いと思いますが、横隔膜というのは立派な筋肉で、皆さんも息を吸う時には収縮させています。
ちなみに横隔膜の痙攣で起こる現象がしゃっくりです。
腹筋や背筋を鍛えれば、日常生活時や運動時の腹圧が高くなるというわけではないのです。
腹圧で体幹を安定させることはできない
また、もしも腹腔内圧で体幹を安定させるのだとしたら、大きな力を使おうとした場合には、腹腔内を通る腹大動脈の血流を止めてしまう圧力が必要になるそうですので、下肢への血流を止めてしまう事になり運動などはできないことになってしまいまうという事です。
もちろん腹筋や背筋がしっかり機能している事は大事ですが、筋力が強ければ腰痛にならないという事ではありませんし、腹腔内圧で体幹を支えているわけでもありません。
過度に腹腔内圧を高めると骨盤帯の痛みが増す事もありますので、無理な腹圧をかけるのは避けたほうが良いそうです。
実際に腰痛は男性に多くみられ、筋力の強い人でも腰痛を起こす方は多く、筋力が弱くても腰痛を起こさない方も多くいることを考えても、腹筋や背筋を鍛えて腹腔内圧を高めれば腰痛予防になるというものではないのではないという考えは理解できると思います。
腰痛の予防や改善には、鍛えることやよりも、ゆっくりと大きく動かすようにしてみてください。
大きく後ろに腰を反らせる運動や、全力で伸びをするような簡単な事で構いません。
怖がらずに動かせる範囲で大きく動かすことを心がけていただけると腰痛の改善につながると思います。